夜中にオシッコで起きないよう、昨夜は水分を控えて寝たのに、心電図計のケーブルがよじれて外れたのか、心電図が途切れていると、男性看護師のOさんが直しにきた。でも、いきなり起こされたというより、その前に、もう朝だと勘違いして目が覚めていたような気もする。おかげで眠れなくなり、おそらく4時半頃まで悶々と過ごす。気温が高いのか、布団をきちんと掛けると暑いし、剥ぐと寒い。
6時20分に起きる。なんだかだるい。昨日シャワーを浴びたせいか。しばらく布団にくるまっていた。洗面後テレビを観る。家ではできないことをやろうとテレビをつけるのだが、知りたいことを効率よく知るためには、テレビはあまり適していないことがよくわかる。その代わり、新聞でいう三面記事や地方版的な部分をそれなりにおもしろく見せてくれる。震災関連のニュースをこうしてテレビで見ていれば、もっといたたまれない気持ちになったことだろう。7時過ぎに採血にきてくれる。朝食後もベッドていて、朝の連続ドラマをしっかりと見てしまった。
9時過ぎから2階へ一人で降り、レントゲンと心電図の検査を受ける。ベストだけで行ったので、かなり寒くなる。戻ってすぐN先生がきてくれて、地下へ。スクワット20回がかなりこたえた。さぞかしヘロヘロだと思った自転車漕ぎは快調で、自転車についてだいぶおしゃべりしながら同じ運動をしても、おとといより心拍数が上がらない。それだけ心臓の力が回復してきているのだという。階段の昇降も練習した。スクワットのせいで、膝が笑う。
けっこう汗ばんで、11時近くに部屋に戻る。親しくなったナースのNさんが、シャワーを前倒しして11時半からにしてくれた。汗を流すだけにするつもりだったのに、お湯が気持ちよく、頭も洗ってしまった。
編集者のK氏から留守電が入っていて、先に出した「3日坊主にならない運動」の企画が通ったという。ストレッチ、ウォーキング、水泳、自転車を4回のシリーズでやるのだ。送られてきたPowerPointを見てから電話。心筋梗塞で入院中と言うと、絶句している。K氏とは、高血圧やメタボ健診などの記事を一緒に作ってきたので、まさかこちらがこんなことになるはずがないということがよくわかっている。
1月初旬に取材をしたいので人選をお願いしますといわれ、ふとN先生の顔が浮かぶ。もう病気になってしまったことは、元には戻せない。ステントを入れてしまったので、薬とは縁が切れない身体になってしまった。だったら、少しでも病気になったことを、人生のなかでプラスに活かしたい。この4回シリーズをやるということで、運動療法から逃げられない気持ちにもなるだろう。モチベーションが続くことになる。捨てる神あれば、拾う神あり。何かを捨てなければ、新しいものは拾えないのだ。N先生、受けてくれるだろうか。
昼食後は、今後どんな危険が待ち構えているのか、どう過ごしたらいいのかを退院前にドクターに聞くための質問票を作りながら、初めて真剣に心筋梗塞についてよく調べてみた。2度目のカテーテル処置の前にドクターからもらった手術承諾書の但し書きを読み(読むと怖くなるので読まずにサインした)、また今飲んでいる薬の副作用などを知ってみると、あとは運動療法をやればいいと簡単に考えていたことに、冷や水を浴びせられた思いがする。
しかし、そのうちに、なぜ標準体重以下で、胴回りも82cm、秋の区民検診で最高血圧が110、中性脂肪と肝機能の値は少し高めだで今回だけコレステロール値がちょっと高かっただけの人間が、危うく心筋梗塞で死にそうになったのか。入院してから頭の中で渦巻いていた疑問への答えが、見えてきた。そして、悪玉コレステロールを積極的に下げるというドクターの仮説も、あり得るなという気になった。
4時頃に病棟内を7周半する。Amazonで、いつも数値が正確でないと感じていた腕で測る血圧計の代わりと、頭部をベッドで支えてくれる楽チンさを家でも味わうためのヘッドレスト付き座椅子を注文した。あと欲しいのは脈拍計だが、運動中に手軽に測れるものがない。さっき買った血圧計と同じメーカーのジョギング用のものと、毎日何度も測ってもらっているパルスオキシメーターをいろいろで比べるが、一長一短で決断できなかった。
5時45分にナースのNさんが、わざわざお別れの挨拶にきてくれた。お世話になったお礼を述べるとともに、ここで発見したナースという職業の不思議な側面について話す。同じ仕事をしているのに、ナース一人ひとりで仕事ぶりがぜんぜん違う。技術ではなく、人間性の発露の仕方が違うのだ。相手が人間なので、自分の人間性をそのままぶつけるしかない。
そんな感想を話したりしているうちに、やっと手術を終えたドクターがきてくれた。申し訳ないが、近親者に二人、対照的な狭心症・心筋梗塞症の患者がいて、その例がどうしても頭に去来してしまうということから始めて、先ほど用意した質問票を少し端折りながら、いろいろ聞いていく。充分納得がいき、こちらの仮説は正しかったという印象を得た。治験はいつでも降りられるということで、同意する。私のようにリスクが低い人間が心筋梗塞になぜなるのかを明らかにすることに、少しでも協力したいという気持ちがある。
夜の担当は、Sさん。運動について書くことになったと話をすると、面白がってくれた。最も親しくなった二人が今日を担当してくれ、印象深い。
7時半に、大学での授業を終えて直帰し、黒犬の散歩を済ませた妻がきてくれ、今日の次第を報告する。黒犬は、すっかり元気らしい。いろいろ荷物を持ち帰ってもらった。
その後Amazonを覗いたりしたあと、こうして病院最後の夜をゆっくりと過ごしている。
夜明け。今日も快晴だ。
朝食はブリの塩焼き、野菜の味噌煮、ふりかけ鉄之介。味噌汁ではなく味噌煮と書いてあったので、汁は残す。
昼食はこの前と同じヨモギロールとロールパン、エビとコーンのグラタン。グラタンはけっこう味が濃いのに物足りない。なんと牛乳ではなく、豆乳で作ってあった。グリーンサラダのノンオイルのクリーミードレッシングが案外とおいしい。
夕食は、鶏肉の甘酢餡かけ、モヤシの塩炒め、漬け物。漬け物がしょっぱくておいしい。
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